新型コロナウイルス（COVID-19）の影響が止まらないこの春、例のない事態に皆さまの不安も尽きないことだと思います。
新型コロナ、胎児への影響は？
当院に来られる妊婦さんが「もし新型コロナに罹ったら…」「赤ちゃんに影響はないの？」との不安を口にされていたので、現状分かっている情報を紹介します。
「新型コロナウイルス感染症（COVID-19）について・妊娠中ならびに妊娠を希望される方へ」※日本産婦人科感染症学会（2020.03.17 更新)の発表から引用
「武漢市内で妊娠後期に COVID-19 に罹患した妊婦 9 例の解析で経過や重症度は非妊婦と変わらず、子宮内感染は見られなかったとしています。」
「胎盤病理解析を行った 3 例で、母子感染は認められませんでした。」
との胎児への悪影響は見られないとの見解・情報を発信しています。
また「最近の報告として妊娠中に罹患した妊婦 13 例のうち、1 例で妊娠 34 週の子宮内胎児死亡が報告されましたが、その原因は胎児へのウイルス感染でなく、母体の重症肺炎と多臓器不全によるものとされています。」
と、胎児の死亡報告もありますが、これは新型コロナウイルスの直接的な影響によるものではなく、母親が肺炎と多臓器不全に陥ったためとあります。
「2 月 12 日付の Lancet の報告」（※Lancetはイギリスの医学雑誌、世界五大医学雑誌とのこと）との前置きはありますが、現状で知られている妊婦さん・胎児と新型コロナウイルスに関する情報は以上のようです。
妊婦さんの体質的特徴から
また妊婦さんが肺炎・重症化しやすい理由として、以下の体質的特性が報告されています。
「妊婦さんの肺炎は横隔膜が持ち上がるために換気が抑制され、またうっ血しやすいことから重症化する可能性があります。」（日本産婦人科感染症学会の報告より引用）
“横隔膜が持ち上がる”とは、妊娠後期に入ると胎児が大きく育ち心窩部（みぞおち）を圧迫します。いわゆる「赤ちゃんが上がってくる」という状態です。この状態になると、肺の下の横隔膜が圧迫をうけて、常に呼吸が浅い状態になります。
当院の妊婦さんの腹診でも、心窩部（みぞおち）が腫れるように固くなっている所見がよくみられます。漢方医学ではこの“みぞおちが詰まった状態”を心下痞（しんかひ）とも呼びます。この心下痞は中期～後期の妊婦さんにはよく見られます。
しかし、心下痞はすべての妊婦さんに見られるかというとそうではなく、ある程度の解除・軽減することは可能です。この点は東洋医学的な見方になりますが、みぞおちの詰まり（心下痞）を緩めることで「妊婦さんの呼吸が楽になる」という結果・現象は当院のプレママ鍼灸でもよく見られることです。
妊婦さんにアビガンは…
新型コロナウイルスに有効ではないかと報告されている薬剤のひとつにアビガンがあります。しかし、アビガンは原則的に妊婦禁忌とされており、妊婦さんには使用できないようです。
しかし喘息に使用される吸入ステロイドが有効であったとの報告もされ、こちらは妊婦さんに適用可能だそうです。
とはいえ、新型コロナウイルスに対する特効薬はないとのこと。
私たちが各自で実践できる最も有効な手段が予防ということになります。
産婦人科関連学会（日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会・日本産婦人科感染症学会）より引用
身近にできる予防はマスクよりも…
同じく日本産婦人科感染症学会の報告より引用になりますが
「外出後や食事前などこまめに流水と石鹸で手洗いをしてください。」
「温水で 20 秒以上，手首まで洗ってください。」
「このウイルスにはアルコールなどの消毒薬（アルコールスプレーやアルコールジェルなど）が有効です。」とのこと。
写真：当院の消毒に使用している消毒用アルコール（エタノール）来院時にお使いになれます。もちろん治療の前後の消毒にも使用します。
「うがいや鼻うがい、口腔洗浄には予防効果は認められていません。」
「薬局や薬店（ドラッグストア）などで購入できるマスク(サージカルマスク)は感染予防の有効性は確認されていません。」
うがいによる予防効果はないとのことですが、手洗いの流れでうがいもしておいた方が良いでしょうね。
またマスクの有効性ははっきりと否定されています。私も同じ意見です。その理由も下に引用しておきます。
「空気中のウイルス粒子は花粉や細菌に比べてはるかに小さく、またマスクの周辺から入り込むことがありますので過信は禁物です。マスクをかけていても鼻を出したり、口のまわりを開けたりすると何の意味もありません。」とあります。
もちろんマスクをすることで心理的に安心できるといったメリットもあるでしょうが、過度にマスクを買い求めたり、マスクがないことに不安を覚える必要はありません。
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