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自律神経の問題と病院で診断を受け…
60代前半の女性、近所に住む娘さんからの紹介で鍼灸を受けにご来院です。
「耳がふさがる感じ(耳閉感)」「ノドの詰まり」「胸がふさがる感覚」
時にそれが強くなると息苦しくなり閉塞感・呼吸困難までになる。
また、ノドの詰まりのために食欲不振に陥る。
さらに不眠症状も現れ、倦怠感・疲労感が取れないし、気力も湧かない。
…このような症状のループに陥ってしまい、かかりつけ医院に行くも
「自律神経の問題でしょう。」と診断され、
デパスを処方されていたが、寝つけず、ノドの詰まりも変化なし。
『お薬を飲んでいるのに なんで症状が治らないの?』と不安になり、
ご家族から当院の鍼灸ケアを紹介を受ける。
以上がこの方の来院経緯です。
(写真の女性はご本人さんではありません)
しかし、よくお話を聴いてみると、近所にすむ娘さん一家のサポート役に全力を尽くしているようで、お孫さんの面倒をみたり…なにかと身を尽くして頑張っておられた様子。
体調不良のバックボーンには、疲労があることをお伝えして、少し活動のペースを落とすようにもアドバイスさせていただきました。
ということで、鍼灸治療の初めの一手は体の底力を補充することから始めます。
1,2診目ともに体の根本から建て直す治療を行いました。
治療の後には「体がスッとしました。」「背中と胸がスッキリしたの息もしやすいです」「視界も明るくなった感じがして、気持ちも軽いです。」といった良好なコメントをいただいています。
まずは体力を補充を優先して正解かと安心させられるご感想でした。しかし…
3診目・湿気の上昇で体調が悪化…
3診目は突然の電話による鍼灸コールでした。
「先日 鍼してもらった後は調子よかったのに…昨日から体調が悪くなった。」とのこと。
来院していただき症状を聴くと「めまいと倦怠感が強い」とのこと。
調子が崩れた日は急激に湿度が上がったときでした。
鍼灸師のための☝point情報
めまい・耳閉館が外湿の影響を受け悪化することから、体質的に内湿・水毒が強いことが判断できます。
めまいといった内耳系症状に加え、倦怠感も少陰腎が関係する症候だと言えます。腎の弱り(腎虚)に湿邪が乗じた状態だと判断し、それに応じた治療を行いました。
とはいえ、まだ体力的に不安定な面は残っていますので、体力を底上げする治療は引き続き継続、加えて体内の水毒を取り除く治療を行いました。
めまいやノドの詰まりを治療するために、水毒を取り除く治療はよく使います。
そのためにも腎の機能を高め、底力を増し、そして排水能力を確保する治療は必要です。
まずは補給系の治療なので、鍼している間はウトウトしていただき、治療後は「耳のふさがり感もなくなった!」との感想を言っていただきました。
4診目・めまいは治まったが不安は尽きない
前回、利水の治療を強めたこともあり、めまいは起こっていない。倦怠感もかなり薄れているようで、虚脱系の症状は問診時の話題に出てこなくなりました。
しかし、ノドの詰まりが残っており、それによる食欲低下、睡眠障害といった症状はまだ気になる状態。
先日の体調悪化で自信を無くしてしまい、マイナス思考のスパイラルに陥ってしまった様子です。
かかりつけ医院に症状を相談したところ、大学病院に紹介されて漢方薬を処方してもらったとのこと。
処方してもらったのは半夏厚朴湯という漢方薬。
これは喉の詰まりを散らす作用を持つお薬で、気鬱・気滞の体質の方によく処方されます。
半夏厚朴湯に用いられる生薬・半夏(ハンゲ)植物名はカラスビシャク。当院の薬草花壇にも生えています。
どうやらノドの詰まり症状、気滞体質を先に改善しようとする狙いのようです。
処方されたお薬に合わせて、鍼灸治療も気滞に対する治療の比重を増やします。
数字で表現すると、気滞:水毒=7:3の治療比率でしょうか。
鍼灸師のための☝point情報
不定愁訴を訴える患者さんは症状の移り変わりがめまぐるしいケースがあります。一つ症状群を解消しても、次の症状群に意識が向かい『まだ治っていないんですけど…』と感じがちになる傾向があります。
しかし、これに引っ張られてはいけません。このケースでは虚証系の症状は改善しており、気滞系の症状が主となっていることに注目すべきでしょう。
解消した症状と今表れている症状を整理して治療方針を組み立てるべきですし、患者さんご自身にも現在の体質を把握してもらう問診と説明を心がけることが必要です。
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5〜7診・ノドの詰まり感が解消!
ノドの異物感・閉塞感も解消され、食事も摂れるようになり、眠られているとのこと。
かかりつけドクターに処方されていた“お守り替わりのお薬(デパス)”も服用せずに済んでいるとのことです。
(ドクターには「本当にしんどくなった飲んだらいいですよ。」と念のため処方していただいていたとのこと)
食事と睡眠が回復してくれば、あとは自分の力で体力も回復させることができます。
自力回復のために必要な最後の要素は運動です。
体を動かすことを少しずつ再開してもらいます。とはいえ、いきなり以前のように体を動かしてはダメ!
ツボや脈の状態をみながら「その人にとって最適の運動ペースをアドバイス」します。
この頃から、週一ペースだった治療間隔を2週間に一回のペースにし、
自分の力で体調を維持し回復できるようリハビリに相当する期間を設けます。
来院時の声や目の力もすごく明るくなって
「こんなに体が元に戻ったのも漢方と鍼のおかげですわ~」と仰ってくれるようになりました。
あとはこのまま鍼灸ケアを卒業・・・!と思いきや
「家族のために新しい目標ができたから、体調管理のために鍼灸に通う」と仰ってくださいました。
いずれは、2週間に一回から月一回ペースくらいにゆったりと通院してくれるようになれば…との目標で私も治療しています。
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