ベトナムからつわり治療に

今回のよだれつわりの診療録はベトナムにお住まいの妊婦さん。

一時帰国の期間中に当院のつわり鍼灸ケアを集中的に受けたいとのご依頼です。

🇻🇳ベトナムからのメール

現在 妊娠8週目になりますが、よだれつわりに悩んでいます。
ただ今ベトナムに住んでまして、9/21に一時帰国がありその時にお世話になりたいと思います。
10日間ほど大阪に滞在しますので短期集中で治療を受けたいと思っています。
(よだれつわりの)症状は妊娠6週頃から始まり、
日中はもちろん夜中もよだれを吐かないと気持ち悪く、
ゆっくり寝ることもできません。
前回の妊娠時も初期から出産するまでよだれつわりに苦しみました。
現在吐き気はあるものの食事は少量ですがとれてます。

こちらハノイで鍼灸院に通ってみておりますが、
3回の治療を受けて現在のところまだ効果は実感できてません。
毎回あちこち場所を変えて試してくれますが、
(改善しないよだれつわりの症状に)不思議そうです。

なんとか少しでもマシになりたいと思うのですが…。
自分で出来るセルフケア方法や、ハノイの鍼灸の先生に伝えられるヒント等ありましたらお教えいただけないでしょうか?

というメールにてのご依頼(途中部分的に省略)。

異国での体調不良、しかも慢性的かつ周囲に理解されない症状はつらいですね・・・。

改善しない症状に対しての「不思議そうです」というメッセージからも想像するばかりです。

さて、帰国、ご来院されるまでに何度かメールでやり取りし、
日本に滞在する期間の治療プランも組み上げました。

治療日数は7回とし、通院可能な日は極力通院してくださることになりました。
海外や遠方からの通院される方には短期集中治療コースがあります。(詳しくはコチラ

また、ベトナムで通っていた鍼灸院への通院も継続してもらいました。
(少しでも早くよだれつわりの症状を改善できるのなら、それが一番です)

また、少しでも症状の改善や変化がみられるなら、
当院で鍼灸ケアを行う際のヒントにもなりますからね。

ということで、初診です。

初診の印象は…ずいぶんと疲れている…

初めて脈をみたときの手ごたえは『疲れているなー、しかも脾胃が…(※)』という感想。

他の所見として以下の通りです

・よだれのタイプにはネバネバ・サラサラ・アワアワの3パターン。
・よだれは起きている間一定量出続け、時間や湿度による増減はない。
後鼻漏の症状あり。
ノドの詰まり感あり。
・便秘は1~2週間に1回
・食べられる物は増えつつあるが、まだ吐き気は健在。
・水は受け付けず、炭酸飲料(有糖)なら飲める
・ベトナムにいた時は六君子湯を飲んでいた

といった状態です。

※脾胃とは、東洋医学でいう消化器系の機能を言います。

つわり症状で苦しんきた既往歴があるので、
脾胃=消化器系が弱っていることは不思議なことではありません。

しかし、これまでベトナムの鍼灸院で治療を受けてきたということから、
もう少し脾胃の底力が保持されていて欲しかったのです。
(欲ばりですね…)

と言いますのも、つわりケアには何段階かの工程が必要です。

と、ここでおなじみ「鍼灸師のためのワンポイント情報」ですが、一般の方にもわかりやすいと思います。
ちょっと目を通してみてください。

鍼灸師のための☝point情報

つわり鍼灸治療に必要な工程

1、安胎
2、脾胃のたて直し
3、胃の逆流を鎮める
4、水毒の除去
(※この水毒の除去にもいくつかのルート確保が必要です)

つわり治療に直接かかわるのは3と4のプロセスです。
1と2は体質的な基礎作りや母子の安全確保に必要なケアです。

しかし、重度のつわり患者さんは、脾胃がやられてしまい弱っていることが多々あります。
そのため2の脾胃をたて直す治療に力を入れる必要があります。

そうなると、3と4のつわり治療の比率が下がってしまいます。
(例、安胎:脾胃:つわり=3:5:2 このようなケースもあります。)

この問題は鍼灸師の診立てと腕の見せ所ですね。

ということで、初診の治療は思い切って「安胎:脾胃:つわり=2:5:3」の治療比率としました。

つわりが全体治療の3割って…このペースだと、
10日間の滞在期間・治療回数7回という限られた条件では間に合いそうにありません。

ということで!ご自宅でお灸をしてもらいます。

※患者さんとは別の人の写真を使用しています

脾胃をたて直すツボに印をつけて、1日2回のお灸による自宅治療です。

食事も改善していただきたいところですが、まだ食事できる内容も限られているのでそれは待ち。

ある程度、吐き気も収まり摂取できる食事のバリエーションが増えた頃に、
食事の制限をスタートしてもらいます。

二診目・よだれの量が減った…かも

問診時の感想は「よだれの量が減った…かも?」
そして「ネバネバが無くなりました。」といったご報告でした。

また、後鼻漏も気にならなくなっています。

なかなか良い手ごたえです。

また「背中に鍼をしてもらっている間、唾液の出が少ない感じがします」とも言ってくださいました。
そのため、この方の治療は背部のツボに対する治療がメインになっていきます。

ご自宅でのお灸もしてくれているとのこと。
この熱意に応えたいです。

ということで、2診目からつわり治療の比率を上げます。
「安胎:脾胃:つわり=2:2:6」です。

元々、便秘体質がかなり強いようで、その体質改善を同時進行で行います。
便秘の改善はつわり治療に直結します。

三診目・鍼後、便秘改善!

「前回の鍼を受けた後、お通じが出ました」とのこと。

ただし、唾液の量は微減のまま・・・
ネバネバは無くなっているとのこと。

治療方針は前回二診と同じとします。

四~五診目・喉の詰まり感が気になる…

ノドの詰まる症状が気になるとのこと。

そしてノドが気になるため後鼻漏の不快感も増えているとのこと。

しかし、便秘体質には動きがあり
「お通じが二日続けて出ました!」とのこと。

「病院の下剤(酸化マグネシウム)でもでなかったのに、鍼ってすごいですね。」
と、通便の効果を褒めてくださいました。

とはいえ、つわり症状をなくすのが最終目的です。

胃腸・消化管の流れがスムーズになれば唾液過多症状もかなり軽減しますよ。
と、お伝えしてつわり治療のペースを上げます。

六診目・唾液がサラッサラになりました!

「よだれが治療を受けた夜にサラッサラになりました。」と、驚きの表情で伝えてくれました。

サラサラになることの意味は以下の通りです。

 ネバネバによる吐き気を伴う不快感が減る。
 痰や鼻水の粘滞性が減る。
 水毒の排出がスムーズになる。

その反面、排水がスムーズになりすぎますので、一過性に唾液量が増加します。

しかし、スムーズにいけば一過性の唾液量増加でその後次第に減少する転機をたどることが多いです、その旨を伝えて安心していただきました

最終日・「良くなったね!鍼って効くんだね!」と旦那さん…

いよいよ、最終日。翌日にはベトナムに帰ります。

正直言いますと、よだれつわりの症状が完全に無くなったわけではありませんでした。

 ネバネバ・アワアワのよだれは消失。
 ノドの詰まり感と後鼻漏は改善。

しかし、サラサラのよだれが残った状態でした。

この最後の一つが治癒しきれずに最後の治療を行います。

あとは、ベトナムに戻ってからのお灸の場所・食事に関する注意点と、
そしてベトナムで鍼灸を受ける際の鍼灸処方箋をお伝えして締めくくりとなりました。
(ベトナムの先生が受け入れてくれるなら)

私としても、よだれつわりを完全に消失するまでに至らず申し訳ない気持ちでありましたが、

旦那さんとTV電話した際に、体調の違いが一目瞭然で分かるらしく
(旦那さんはベトナムに戻っている時のこと)

「会話中の唾液を出す回数が減ったことや、
食事できるレパートリーが増えたことに気づいてくれて
『すごく良くなってるね!』とか
『やっぱり鍼って効いてるね~!』とか言ってくれるんです」と言ってくれたのだそうです。

それを聴いて、ホッとする半面、もう少しあと少し…よだれ症状を減らしたかったな…と申し訳ない気持ちでもありました。

あとは、ベトナムに戻ってからの鍼灸・食事の体調ケアで体質改善を目指します。

お土産とおすそ分けをいただきました。

ありがとうございました。

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