Category: 当院の鍼灸カルテ

  • 突然のめまいと吐き気に歩けない…

    突然のめまいと吐き気に歩けない…

    買い物途中でメニエール症状を発症 今回のメニエール症状の鍼療カルテは60代後半の女性。 買い物途中でスーパーの店内で突然にメニエール症状が起こったとのこと。 症状も強く、猛烈なめまいと強い吐き気のため自力では歩けない状態、家族に手を引いてもらいながらの来院となりました。 治療ベッドに横たわるものの、目を閉じてもめまいがする。 かといって目を開けようものなら強力なめまいが襲ってきて、吐き気が増強すると、訴える声も弱々しい…そんな状態。 聴けば、メニエール症状は15〜20年に何度か発症していたとのこと。 「最近の体調はそれほどおかしくなかったのに…」とは本人のお言葉。 しかし、ここ最近の変化に急激な湿度上昇があったことは見逃せない外的要因の一つです。 気圧や湿度の変化をきっかけに「めまい・吐き気・耳鳴りが急に発症した」ということは意外と多いケースなのです。 体に影響を与える外からの要因として湿度は湿邪(しつじゃ)や水毒(すいどく)とも呼ばれます。 この水毒の有無を確認するために、脈診・腹診を行います。 脈診では全体に弱く沈んでいるものの、肝腎の根っこは力が残っているようです。脈状は軟脈大脈といったところでしょうか。 軟脈が出ていると時点で湿気の影響を受けている可能性が強いといえます。 腹診では上実下虚(じょうじつかきょ)の情報が強くあらわれています。 鳩尾(みぞおち)の緊張が強く、漢方ではこのようなお腹の状態を心下痞(しんかひ)と呼びます。 この心下痞、軟脈、悪心、吐き気などは水毒と関係の深い情報だといえます。 鍼灸師のための☝point情報 湿邪や風邪 寒邪などを外邪と呼び、体調に影響を及ぼすとされていますが、霊枢にあるように正気がある程度 充実していたら、それほど大きく傷害されることはありません。つまりこの方はそれまでに大きく正気を消耗するような下地があっったということが推測されます。 この方の場合も、正気の弱りが脈診・腹診所見に現れています。 となると、まずは正気の弱りを補充して、悪いものを取り去るという治療方針が立てられます。 その次に処理すべきは湿邪です。この症状は単なる虚証によるものではなく、正氣の虚と実邪が混在して起こる症状です。邪の性質と居場所を明確にすることで治療効果が左右されます。 鍼でめまい体質を改善すると安堵の声が とにかく目が回るような強烈なめまいを鎮静化させる必要があります。 めまいを起こしている身体は、まさに「上実下虚(じょうじつかきょ)」という状態にあります。体の上部に「めまい・吐き気」などの症状が集中しやすく、下部は根本的な元気が不足しているのです。メニエール症状は上下のバランスが破綻してしまった状態といえるのです。 めまいの治療では、この上実下虚の状態を元に戻してあげる必要があります。鍼灸では上実下虚の状態を改善することは、日常的に行っていることです。 治療の前半はあお向けになってもらい、お腹と足のツボを使い、体の上下のバランスを元に戻します。 すると「あ~・・・目が回らなくなってきた。」とホッとしたような声で症状が変化していることを教えてくれます。 ここで注意しなければいけないことは“めまいが治まったからと言ってすぐに目を開けないこと”です。それを注意しようとした瞬間・・・ 油断大敵!めまい再び… 「あー!やっぱりまだ目ぇ回るわ・・・!!」 「んー・・・気持ち悪い・・・」 と、実況中継をしてくれました。 まだこの段階では、完全にめまいを鎮めきっていません。 言うなれば、体を治すためにいったん症状を落ち着かせている状態なので、かんたんな刺激ですぐに症状が再発してしまう状態なのです。 めまいの再発を実際に体験しているので、この理由を伝えるとすぐに理解してくれました。 「(目を開けて)良いと言うまでしばらく目を閉じてもらうこと」を約束してもらい、治療再開です。 さて治療方針でいうと、上実下虚の状態を解除しただけではめまいも吐き気も改善しないということが分かりました。 このことから、メニエール症状を治すにはもう一手が必要だということが確認できました。 そのもう一手が水毒除去です。そしてその水毒は主に鳩尾(みぞおち)に居すわっています。上実下虚モードを解除し、みぞおちの水毒を取り除く鍼をしましたところ・・・。 「また めまいが止まった・・・」 「さっきと違って気分もスッとした感じがします。」と、声にも力が戻ってきたことが分かります。 みぞおちの水毒を取っているので、ムカムカ吐き気も無くなっているはずですので、それも確認すると 「ホントに!ムカムカしたのが無くなってます。」とのこと。 ここでようやく目を開けてもらっても大丈夫。少々なら体を動かしても大丈夫なはずです。 鍼治療の後半は安定させること 姿勢を変えても大丈夫なので、ゆっくりうつ伏せになってもらいます。 その際も「あー・・・体を動かしても目が回らない!!」 「鍼ってエライもんやねー」と感想をしみじみと伝えてくれます。 後半の治療目的は、背中のツボを使って「改善した状態を安定させること」です。 鍼した直後は文字通り「病み上がり」の状態なので、非常に不安定なのです。 ですから症状を再発させないために、体質そのものを安定させる必要があります。…

  • 授乳中にメニエール症状…鍼灸カルテ・その2

    授乳中にメニエール症状…鍼灸カルテ・その2

    回転性めまいと難聴から始まった… 二児のママさん(40代) 現在、産後8ヵ月。授乳期間中とのこと。 『最近どうも疲れが取れない』『ストレスを感じる』『イライラがコントロールしにくい…』と感じる日が続いていました。 そんなある日のこと、突然に床や天井がグルグル回るようなめまいに襲われ、慌てて耳鼻科へ。 診察を受けるとメニエール症候群の診断…。 診断は出たものの、授乳中なのでお薬の処方は制限があり、当院に鍼灸の併用治療を…とご来院されました。 メニエールの要因がたくさん揃っている… 「産後の疲れが取れない…」 「授乳中である」 「そのため睡眠不足も日常的。」 「上のお子さんも感情が不安定になることしばしば」…と、産後の疲れが定番のように蓄積している状態です。 また、耳がふさがる感じ(耳閉感)にも日常的に悩まされ、右耳の聴力低下も耳鼻科で指摘されたとのこと。 問診した時は、めまいの激しさは少なくなっているようでしたが、耳の症状が多いのが特徴です。 ※起き上がった時や首を動かした時にめまいが起こる状態。 東洋医学では腎虚体質の可能性が強いといえますね。 鍼灸師のための☝point情報 めまい・聴力低下などから腎虚を想定しますが、注目すべき条件として“産後”であり“授乳中”であることがポイントです。 “産後”も“授乳中”もともに血虚の可能性が強いと言えます。 単に腎虚として治療するだけでなく、補血の治療要素も組み込む必要があると判断しました。 めまい症状は内風によるものと言えます。また「風を治するにはまず血を治する」という言葉もあります。 『李中梓 医学全書』(中国中医薬出版社)より引用 これは痺証に関する言葉ですが、内風にも適用できると考えます。 と、うんちく話は置いておいて… とにかく、体調を調えて不足した元気を補充し、症状を落ち着かせる鍼灸ケアを開始します。 補う鍼をするときは、弱ったツボ(経穴)にやさしい鍼をするのが常道です。 また、鍼をしばらく効かせたまま安静にしてもらう“置鍼(ちしん・おきばり)”の時間を設けます。 ※置鍼はツボに鍼を刺した状態でお休みいただくことです。 疲労が強い人ほど、置鍼の間にウトウト、スヤスヤすることが多いです。 この方も予想通りウトウトしていただきました。 ママサポート鍼灸では、赤ちゃんと添い寝しながら置鍼をすることもあります。(※このカルテの女性とは別の方の写真です) 置鍼中にウトウトした方が鍼はよく効くのです。 治療後…「なんだか、耳がスッキリする気がします!」と耳閉感の改善したことに気づいていただきました。 それもそのはず。疲労を取り除き、元気を補充し、耳周りの渋滞・詰まりを開通させる治療をしたのですから。 これで一週間様子をみましょう。 ただし「自宅でのお灸はできるだけ続けてください」とのお願いをしてお帰りいただきました。 2診目、めまいは治まり 耳閉感が残る この一週間はめまい症状は治まっていたようです。 しかし、耳のふさがる感じ・耳閉感は続いているとのこと。 治療は引き続きエネルギー補給の治療を主としますが、耳周りの詰まりを開通させる要素を少し増やします。 治療中にウトウト…治療後に耳がスッキリ(耳閉感の軽減)は前回と同じ。 3診・4診、耳閉感は徐々に減少するも… 耳閉感は治療開始の頃に比べると確実に減ってはいるものの、睡眠不足や疲労、そしてストレス時に悪化するようです。 腎虚体質・血虚体質と気滞(≒ストレス)が関与していることがわかる情報です。 また、耳閉感は五感にかかわる症状ですから、精神的な負担・ストレスに直結します。 つまり耳閉感そのものがストレスの元になり、そのせいで耳閉感が悪化、治らない…という流れもあるのです。 エネルギー補給と渋滞解消の治療は必須です。そしてその治療の質を強める必要があります。 5診目、耳閉感も落ち着き… この一週間は耳閉感も落ち着いて、ストレスも減ったとのことです。 聴力に関してはまだ安心はできませんが、めまい・耳閉感は落ち着いているため(また、お子さんの夏休み期間に入るので)ここで一旦、鍼灸ケアは卒業とします。 夏の睡眠不足と家事・育児の疲労への対策として、自宅灸のツボをアドバイスしてお見送りしました。 当院の東洋医学的メニエール鍼灸ケアを希望される方は 電話予約はコチラ0721-53-6330…

  • 起立性調節障害で学校に行けない

    起立性調節障害で学校に行けない

    起立性調節障害で生活が一変… 起立性調節障害になり朝起きても体が動かない。ひどいと夕方近くまで体が動かない… そんな症状で来院されたのが当時小学校6年生のRクン。 体調を崩す前まではサッカーに塾にと毎日充実して頑張っていたとのこと。 しかし、起立性調整障害になって体調を崩してからは、 塾もサッカーも辞めることになり生活が大きく変わってしまいました。 通学できても、体が動くようになるのはお昼からなので、 昼休みや5時間目に登校ということが多く、このことはRクン本人も悩んでいたことだと想像します。 もちろん大学病院で診察を受けましたが、起立性調整障害の診断を受けお薬の処方は出たものの一向に症状は変わらず…。 見かねたお母さんが当院の小児はりを見つけたとのことでした。 鍼灸師の診たて 初診時から特徴的だったのが、腹診です。 腹部の動悸(東洋医学では動気と言います)が強く、触らなくても臍周囲に脈打っているのが見ただけでわかるほどです。 この所見は、心身ともに緊張の度合いが強く、その緊張のため体力を消費している状態だと見受けられます。 とはいえ、予想していた以上に元気の消耗はひどくない様子。 症状の強さから想像される体質的な消耗はまだひどくありません。 体質を建て直すなら今!というタイミングですね。 治療方針としては、体を中心の緊張の緩める治療をメインとし、次いで体力の補強を行います。 しかし、それだけでは十分とは言えません。 Rクンには宿題をしてもらうことにしました。 起立性調節障害を治すための宿題とは!? 宿題といっても特別なことはしません。 深呼吸をするだけです。 当院では呼吸法をよく指導しています。『深呼吸なんて…意味あるの?』と思う人もいるでしょう。 しかし、現代のお子さんの多くは“呼吸の大切さを教えてくれる機会”に恵まれていないことが多いのです。 そしてもうひとつの宿題が筋トレです。 筋トレも特別なメニューはありません。 腕立て伏せと腹筋をそれぞれ10回ずつ。まずはここから始めよう!という形でスタートしました。 なぜ深呼吸?筋トレ?と思われるかもしれませんね。 深呼吸は自律神経を調節することにつながります。 筋トレも同じく自律神経を目的としています。 Rくんの場合、気持ちと身体(気力と体力)の不調和が基本体質としてあります。 やる気がないということではありません。『起きなければ!』『学校に行かなければ!』という気持ちと体のリズムが一致していないのです。 さらに事態を複雑にしているのが、時間(昼夜の周期)と体のリズム(サーカディアンリズム)の不一致が加わっているのです。 つまり、複数レベルでリズムが噛み合っていない状態なのです。 こうなると慢性化、長期化してしまうのは当然です。 この状態を解除するために小児はり・お灸・呼吸法・筋トレを組み合わせたわけです。 結果は5診目から・・・ こちらの想定していたよりも早く効果は現れてきました。 小児はり治療を始めて5回目には、体調も落ち着きはじめました。 朝には起きれるようになり、夕方までダウンすることなく過ごすことができるなりました。 二学期からは、朝から登校できるようになったのはもちろんのこと。 無事に中学校に進学。部活も運動部系に入部し、新しい環境での新学期もクリアできています。 当院の東洋医学的 小児はりを希望される方は 電話予約はコチラ0721-53-6330 メール予約はコチラ

  • V字になっている胎児の逆子ケア診療録

    V字になっている胎児の逆子ケア診療録

    V字になっている逆子の赤ちゃん 問診で得られた情報は以下の通りです。 現在30週、逆子の診断を受けた。 妊婦検診では逆子体操を勧められるも、いまだ効果なし。 胎児はVの字になっている状態とのことであるが、 骨盤に(胎児の)お尻が落ち込んでいるということは言われていない。 お腹の張りや痛みはなし。 臍帯が首に巻きつくこともない。 羊水は少なくなし。胎動もしっかりある。 現在のところ働いており、産休は二週間後に控えている。 職場では足元にヒーターを置き、足首にはカイロをまめに貼っている。 ただ、夏場は素足で冷房で足元を冷やしていたとのこと。 鍼灸師の診立て お腹の張り痛みが無いというのは、ひとつ良い情報ですね。 張り痛みがあると、逆子治療に入る前に腹部の緊張を緩めるケアが必要です。 この方の場合、ひとつ治療工程が減りますので逆子治療に専念できるのです。 他にも良い情報といえば、足元をしっかりと温めているということ。 これも助かりますね。 逆子治療に使うツボは足首から下に多いです。 足元を全体的に温めているということは逆子のツボを温めることに近いのです。 但し、注意を要する情報が2点。 “夏の足の冷え”と“在職中”ということ。 夏場といえば半年前のことですが、意外と冷えというのは隠れて潜伏しているものです。隠れ冷えという状態です。 そして仕事中ということは日々の緊張と疲労が強いことを意味します。 この2点は逆子を治すには不利な条件といえるのです。 しかし、2週間後には産休に入るので、2週間後に逆子を治すチャンスが来るということでもあります。 あと、ひとつ注意するべきことは胎児の姿勢です。 骨盤にお尻がはまり込んでいないとはいえ、胎児がV字になっているとのことなので、 いつ骨盤にはまってもおかしくない状態とも言えます。 私の経験上、骨盤にお尻が入りこんでしまうと治りにくいと思いますので 骨盤にはまる前に逆子を治すよう急がないといけません。 脈診:妊婦さんの脈である滑脈が旺盛。体力は充実している証拠です。 他に腰、骨盤周りに緊張を帯びていることが脈にも出ています。 腹診:赤ちゃんの頭は右上にあり、ちょうど左側腹部に足で蹴っているのだろう胎動が感じられました。 腹部の緊張はそれほど強くなく、良い状態といえますね。 治療はまずお腹に温灸を行いました。 写真は妊婦さんのお腹にお灸をしているところ(本人さんではありません) お腹の温灸は関元(かんげん)というツボを中心とした5カ所のツボ。 このお灸は母体の元気を補い、お産の準備を調えることが目的です。 お産を準備を調えることは安産のための治療だと言えます。安産は逆子の正反対の状態です。つまり安産のためのお灸をするということは逆子を治療するということでもあるのです。 ご自宅でのお灸のツボに目印をつけ、毎日コツコツと逆子灸を続けるようアドバイスして初診の逆子ケアは終了としました。 お灸の刺激で胎児がよく動く 2診目は土日を挟んでの逆子ケアです。 ご自宅でお灸は毎日していただいているとのこと。 「お灸して横になると赤ちゃんがよく動いてくれる」 「今まで以上に活発に動いてくれるので期待できます」 と嬉しいお言葉をいただきました。これはご期待に応えないといけません。 2診目も引き続き、お腹と足のツボに逆子治しのお灸です。 産休前が一番ハード 3診、4診と逆子ケアを終えても、検診で『逆子が治っていない…』という状況が続きました。 というのも、この頃はお仕事が産休に入る前の引継ぎ期間で、心身ともに疲労と緊張のピークでした。 ですので、この時期は逆子ケアの効果が表れにくいタイミングでもあります。 しかし、このハードな時期にこそ逆子ケアでしっかりと疲労と緊張を解除しておくことが大事なタイミングでもあるのです。 産休に入って結果が出る ハードな時期を乗り越えて産休に入った5診目が終わり……

  • 産後も続く唾液つわりの診療録

    産後も続く唾液つわりの診療録

    つわりというと妊娠初期だけの症状と思いがちですが、実はそうではありません。 つわりの症状や体質が強すぎる方は、出産ギリギリまでつわりが続くケースや、産後もつわりが続くケースがあるのです。 当院にも年に何人かそのような方が来院されます。今回の記事はそのような産後もつわりが治らない方の診療録の紹介です。 つわりに関する問診所見 現在、産後1年7か月。 妊娠中は出産ギリギリまで唾液つわりが続いていた。 出産が終わり、ようやくつわりが終わるかと思いきや現在も続いている。 唾液は夕方に量が増してくる。夕食後に減ってくる。 産前に比べると症状は軽いかもしれないが、一向に治まらないつわりに精神的に疲れている。 口の粘り・舌縁部の痺れ感じ 産後は口内炎ができやすくなった ノドの詰まり感 食欲がなく、吐き気もあり、胃もたれ、胸やけもある。 嘔吐もまだ1日一回は吐いている。 便は2日に一回、尿は1日に三回 手足の冷えも強い。 …などなどの体調も併せて持っています。 妊娠期に漢方薬を処方され、半夏厚朴湯、当帰芍薬散、茯苓飲を服用したが、どれも無効であった。 出産時は胎盤の剥離がうまくいかず、出血過多⇒輸血を受けた。 ◆脈診をしてみましょう… 脈は浮軟沈弱。左右関上の内外に実。 腹診もみます 心窩部~胃脘部にかけて実。 臍下の虚・弱り 鍼灸師の診立て 脈診・腹診の反応から、消化器系(脾胃)の水毒の停滞が強く、排出すべき水が多くあることが分かります。 その反面、つわり生活が長期間続いたことによる疲れもあり、体質的な弱り(虚)もしっかり出ています。 もちろん産後という状態からも、体質的な弱り・虚は無視できません。 産後は無条件でお疲れ体質だと思って良いでしょう。 治療としては、消化器系(脾胃)の力を補給・底上げすることを最優先とします。 そして唾液つわりの本体である水毒を体外に追い出すことを治療の後半に行います。 この2点を大きな治療方針とします。また甘い物は飲食ともに節制してもらいます。 甘い物は水毒の元になるからです ご自宅でしてもらうお灸のツボなどをお伝えして初診の治療は終了とします。 しばらくは週1回の通院とします。 2診目は一週間後、唾液の量は変化するか? 「この2日間、よだれの量が減った気がする!」 「口中の粘り感も減っている。」とのこと。 なかなか良い反応です。 しかし、夕方のつわり症状悪化の傾向はまだ残っており、 他にも舌縁部の痺れも残っているとのことです。 ◆脈診と腹診を行います… 脈証:浮弦沈弱 腹証:心窩部の詰まりは減り、胃脘部の実・詰まりが残る。 左側腹部の張りがある。…と、このような所見です。 鍼灸師の診立て 脈診・腹診所見が初診時に比べて変わってきました。 わずかな変化に見えるかもしれませんが、体質的な弱りが改善されつつあります。つまり体力が回復し、底力・回復力がついてきたと判断できるのです。 となると、水毒を追い出す力も増してきているとみることができます。 自覚症状でも、唾液量が減っているとの実感もあるようです。 妊娠中ではないということも体質的な安定を意味しますので、治療効果が出やすいという有利な面があります。 以上のこともあって、水毒を排出する治療を初診ときより積極的に行います。 3診目「よだれが減りました!」 「よだれが減りました!」との報告を受けました。 今思い出しても、この時の笑顔は忘れらないですね。…

  • お灸で(逆子が)治りません…という妊婦さんの診療録

    お灸で(逆子が)治りません…という妊婦さんの診療録

    お灸で治りません… こんな件名でメールを送っていただいたのは、堺市在住の妊婦さん(34歳) はじめまして。 他院で逆子治療中ですが、逆子が治りません。 1週で5回通いました。 赤ちゃんの胎動が少ないです。 お灸後も赤ちゃんがあまり動かず困っています。 何とか横には動いてますが、回転できないようです。 急ですが、明日は、予約あいてますでしょうか。 現在29週目ということもあり、また他院で集中的に治療したにもかかわらず、無効であったのがプレッシャーになっている様子がメール内容から見受けられます。 逆子ケアの診療録 初診:06月28日 主訴:逆子が治らない 問診情報は次の通り 胎児の頭の位置はみぞおちの下にある。 お尻・足が骨盤にはまることも無し。 臍帯が首にからまることも無し 3歳男の子の育児中。 前回(3年前)のお産は難産であった…。 そして現在、職場の引継ぎ中で、神経使う…とのこと。 脈証 全体の脈状は軟滑 左右の関後一分に弱りの脈 尺中の内側に硬い弦脈 腹証 臍下に弱り 鍼灸師の診立て 脈診や腹診で分かることは、かなりのお疲れを蓄積していることです。 家事も育児も仕事も続けている状態で、さらに職場では産休前の引継ぎ作業に気を使う状態…となれば、疲労が蓄積していないはずがないのですね。 それが脈診にも腹診にもしっかりと現われています。 このような状態で逆子を治す治療だけ行っても、逆子は治りません。 至陰や三陰交だけのお灸では足りないのです。 おそらく前の鍼灸院では、逆子を治すことだけを行ったのかもしれません。 当院での逆子ケアはまず最初に疲れを取り、体力を補充する温灸を行います。 この診立ては鍼灸師により異なります。他院でも同じ診立てができるかどうかは不明です。 とにかく優先的して逆子ケアの準備を整えるわけです。そして最後に逆子のお灸を行います。 実際の治療では、逆子ケアの準備にあたる治療に30分。逆子のお灸に20分(冒頭の問診に7~8分)との時間配分で行っています。 以上にも書きましたように、当院の逆子ケアでは逆子のツボだけに温灸を行うことはまずありません。 全体的に体調を調えてから逆子ケアを行うから、他の鍼灸院では治らない逆子も治るのだと考えています。 治療後のアドバイスは毎日の自宅灸をすること。 そしてお灸のツボをお伝えします。 このお灸のツボも至陰と三陰交だけではありません。 【写真は至陰と三陰交にお灸】 「この人の体質ならば…このツボ!」といったように妊婦さんによってそれぞれ異なります。 また、同じ人でも、週数が変われば、自宅灸のツボも変わることもあります。 2診目・逆子は変わらず… 06月29日 脈に出ていた弱りの所見は少し減る。 赤ちゃんの頭の位置は、心窩部(みぞおち)下から右わき腹に変わるが、逆子のまま…。 体力の底上げ治療と逆子治療を行い、2診目の逆子ケアを終了とします。 3~4診目・少しずつ充実してくる 7月4日および7月7日 脈の力は少しずつ充実してくる。 側腹部の硬さが出てくる。 体質が変わってきていると判断して、お灸のツボの場所を変えます。(自宅灸のツボも同じく変更)…

  • 不眠とムズムズ脚症候群・診療録

    不眠とムズムズ脚症候群・診療録

    今回のケースは比較的新しい話です。 富田林市在住 、30代後半の妊婦さんの鍼灸診療録。 ムズムズ脚症候群と不眠に苦しむ妊婦さんの診療録 初診:10月19日 主訴:ムズムズ脚症候群および不眠 現在、妊娠35週。 2回目の妊娠。 前回の妊娠出産は5年前。 ムズムズ脚症候群は妊娠初期から発症していたが、自然治癒。 しかし妊娠後期に入って、ムズムズ症状が再発。一気に悪化。 2日前からは下肢だけでなく、肩~上肢にかけてムズムズ症状が拡がる。 1-2時間しか眠れない。  体力が日に日に低下していることを実感する。お産が近いというのに不安。 前回の妊娠時にもムズムズ脚症状があったがその時は軽症であった。 以上が、大まかな情報です。 ■脈診 浮位で弦、沈位で軟弱 右:関上の弱りが強い 鍼灸師の診立て この方はムズムズ脚症状もひどいのですが、睡眠不足もかなりのものでした。 1~2時間しか眠れていないということで。 その証拠に目には大きなクマができて落ち窪んでいました。 元々、ムズムズ症状が出る以前から睡眠は少ない傾向だったそうで、 睡眠を摂ることに対して執着しないとのことでした。 そのせいもあって、ムズムズ症状に苦しむうちに、気づけば驚くほど睡眠時間が短くなったようです。 さて、ムズムズ脚症候群の体質についてですが、前回(5年前)の妊娠時、今回の妊娠初期にも発症しています。 しかし、どちらも軽症であり自然治癒してしまったため見過ごしてしまったようですね。 この隠れたムズムズ体質が妊娠後期に入り体力が低下するタイミングに乗じて、一気に発症したようです。 加えて、いろいろと心身ともに疲労を蓄積するようなこともあったはずです。 隠れていた症状が再発し悪化するということは、そのような条件がそろって起こるものです。 治療方針としては、次の3つです。 ①気血を最優先に補給すること。 ②水毒を除去 ③経絡を巡らす とにかく消耗が激しいので、ムズムズ症状の改善の前に体力を補わなければいけません。 次いで5年前より隠れひそむムズムズ体質を解除するために水毒除去です。 そして、実際にムズムズ症状が起こっている経絡の流れを良くして、 この方のムズムズ脚症候群の治療とします。 ※実際の治療時間は…脈診腹診問診などに5分、治療時間を50分、内、15分程度の置き鍼を行いました。 問診には最短の時間となるよう心掛けました。 問診中にムズムズ症状が起こることを懸念したためです。 また置き鍼の時間は、ムズムズ症状を避けるため長くなりすぎないように… とも思ったのですが、少しでも仮眠を摂ってもらいたい気持ちもあって ギリギリ長めにとって15分としました。 しかし、置き鍼の間はウトウトできたようで、 「久しぶりにウトウトできました!」と、喜んでいただきました。 たった15分のウトウトが久ぶりだと喜べることからも、 不眠状態がかなり長い期間にわたって続いていたことを示しています。 治療の後半は終わりまでウトウト・スヤスヤ眠っている状態で、 お帰りの際の表情や声は、来院時とは別人のように明るくなっていました。 2診目・気になる一週間後… 10月24日午前 重い症状であった方の二診目というのはやはり緊張するものです。 どのような表情で来院されるか……

  • チック症の診療録・年長さんの男の子

    チック症の診療録・年長さんの男の子

    大阪市からのお越しのお子さんのチック症、初診は去年のことでした。 年長さんの男の子のチック症の診療録です 初診:9月26日 主訴:チック症…首ふり、ジャンプ、突然大声を出す 半年前(梅雨時期)から頻繁にジャンプや大声(「アッ!アッ!」などの短い発声)が始まる。 (それまでも顔しかめるチックは起こっていた) 夏休み明けからさらに回数が増える。 他の所見 鼻水・鼻づまり 喘息の診断を受けたことあり 甘いものを好む よく風邪をひく 脈診…浮位で軟脈 腹診…心窩部~胃にかけてのコリが強い  写真のお子さんは本人ではありません。 鍼灸師の診立て この子は自由に活動し発散することを強く好むタイプです。 梅雨時期や夏休み明けにチック発症、症状増加する傾向からも、 その要因があるとみています。 それだけにチック症状も活動的で外向きです。 ジャンプや大きな声というチック症状も、その子の性格をある程度の影響を受けています。 そこで治療方針としては、体の中に有り余ったエネルギーを発散させ、蓄積しないようにするツボを使いチック症対策の小児はりを行います。 蓄積したエネルギーをスムーズに発散させる経穴(ツボ)に小児はりを行い、 その後、神経の興奮を鎮める経穴(ツボ)に小児はりをします。 神経を鎮めておくことで、チック症が悪化することを防ぎます。 養生指導は、しっかりと汗をかいて暴れること。 この話を伝えると、たいていのお母さんは 「ええーーっ!もう十分すぎるほど暴れてるんですけど…」と言われます。 けれども、大人の(しかも女性の)予想をはるかに上回るのが男の子の運動(必要)量です。 ストレスには発散させることも大事なことなのです。 2診目・声のチックが減る 10月3日(月) 音声チックが減った! でも夕方~夜の時間帯は声を出している。 顔のチックはまだ残る…とのこと。 音声チックは顔(表情筋)チックと比べて、体の中から出す勢いが強いチックです。 その音声チックが減ったということは体の奥の停滞や詰まりが減ってきていることを意味すると判断します。 治療方針は初診と同じく、体の奥に蓄積したエネルギーを巡らせ発散する小児はりを行います。 2診目は小児はりに加えて温灸も行います。 温灸はご自宅でも毎日できるケアです。 小児はりに来ていただくまでの間も自宅で治療に近いケアを続けることができます。 この子の今の状態に合ったツボ(経穴)をペンで印をつけて温灸点の指導をしてこの日の小児はりを終了とします。 3診目・さらに声のチック減る 10月11日(火) 音声チックは気にならない程度に減った。 首ふり動作も気にならなくなったとのこと。 4診目~6診目・一進一退を繰り返す 音声チックと首ふり動作が交互に起こる。 音声チックが収まると、首ふりが目立ち、 首ふりが収まると、音声チックが目立つ…といった状態とのこと。 他のジャンプなどの大きな動作のチックは消失している。 【鍼灸師の診立て】 …以上のように膠着状態といえる時期はチック症の治療ではよく見られます。 これも治癒ステージのひとつといえます。 チック症の治癒過程のひとつには次のように3つのステージに分けることができます。…

  • チック症の診療録・小学5年生の男の子

    チック症の診療録・小学5年生の男の子

    初診カルテ・小学5年生の男の子のチック症 初診は去年2016年の12月24日の話です。 柏原市在住の 10才の男の子 主訴:チック症(まばたき、・目をギュッとつむる・首ふり) 小学3年生からまばたきチックが始まっていたが、最近になって首ふりも加わる。 習い事は、日、月以外のすべての曜日にECC、そろばん、塾、サッカーなど 最近、進学を目的に塾に週3回通いだす(22時まで)。 他所見としては・・・ 喘息性気管支炎 時にひどい成長痛 脈診と腹診から分かること 脈診 左尺中脈に弱 腹診 左腎水の虚 胃の詰まり(強いコリ) 鍼灸師の診立て 高学年にもなると多忙になり、習い事も受験を意識した内容が増えます。 そうなると、緊張度と疲労度ともに倍増しますね。 園児~低学年の頃の“楽しく通う”といった要素が無くなるのです。 となると、疲労も緊張・ストレスもジワジワと蓄積し、 上実下虚体質は色濃くなってきます。 この体質が表面に現れた形のひとつがチック症なのです。 ◆治療方針 この子の場合は、とくに疲労や睡眠不足が脈診や腹診にも強く表れています。 ですので、まずは体力を補充する経穴(ツボ)に温灸をします。 疲労が軽減されるだけでも、緊張は解けやすくなるものです。 体の底力を助けるツボは下腹部に集中していますので、その部位に温灸。 次いで上半身の緊張を散らし、ほどく治療を、 お腹と背中のツボに行い治療を終了としました。  このカルテとは違うお子さんの写真です チック減!・2診目 1月14日にご来院。 「あれからチックが減りました。」 「ゲームしている間はチックが出るようです。」 とのこと。 治療方針は変えずに、底力を補充してからの上半身の緊張をほどく治療を行う。 その後…3診目以降 月に一回のペースで定期的に体調を整える治療を継続している。 3月、4月での診療ではチック症状は出ていないとのこと。 骨折や花粉症、視力低下などその時々の症状に対応した治療を行うも チック症の再発を抑える小児はりも継続して行っている。 このお子さんのチック症はかなり早い段階で改善したケースです。 多くの場合、もう少し治療期間が長くなることが多く、 また、チック症状の再発を繰り返しつつも、徐々にチック症が消失する…と、そんなケースが多いです。 とはいえ、順調に治り勉強にも差し障りなく過ごせるようになり喜ばしい限りです。 当院の東洋医学的 チック症治療を希望される方は 電話予約はコチラ0721-53-6330 メール予約はコチラ

  • よだれつわりと吐きつわりの診療録

    よだれつわりと吐きつわりの診療録

    2年ほど前のよだれつわりと吐きつわり 2つのつわりに苦しむ妊婦さんの症例を紹介します。 この方は大阪府貝塚市在住の2児のお母さん(そして現在、妊娠10週目)。 一週間で4㎏の体重減少と、治療開始時はかなり消耗が激しかったですが、 嘔吐減少、吐きつわりの改善、尿量増加、よだれつわりの改善…と、 段階を踏んで体質改善と症状消失に結び付けることができたケースです。 お問合せは次のようなメールから 今回3人目、4回目の妊娠です。 過去三回の妊娠よだれ悪阻と妊娠後期まで吐きつわりに悩まされました。 家ではゴミ箱を抱えて生活しました。 そして今回6週に入るところで、よだれ悪阻がはじまってしまいました。 4歳、2歳の子守をしながらのよだれは辛すぎます。 まだ病院にもいっておらず、(8週に入ってから行こうと思っています) 早めに治療すれば早めによだれは治るのでしょうか? 贅沢を言えば、8週から12週にくる酷いつわりを避けたのですが…。 早めの治療が効果的なのであれば、すぐにでもそちらを受診したいです。 宜しくお願いします。 初診カルテ・固形物は口にできない… 11月24日 主訴:よだれつわり、吐きつわり(妊娠10週目) 【問診情報】 病院で点滴を受けるが、つわり症状は一向に治まらず。 このつわり症状を何とかしてほしい…との依頼。 口にできるものは限られている。 固形物は基本的に無理で、果汁、水分…といったところ。 他の飲食物は一切 受け付けられない。 飲まず食わずのため、この1週間で4㎏減少。 そんな状態なのに唾液は過剰に分泌される。 唾液を吐き出すため、ノドは乾燥してしまう。 鍼灸師の診立て   写真は脈診風景のイメージ写真です ■脈診…右寸口に滑脉、他の部位は沈位細 ■腹証…心窩部の詰まり、臍下の弱さが気になる所見 脈診・腹診から上半身に水と熱が詰まってしまっている状態がわかります。 さらに水と熱とが逆流しようとするので、よだれつわりと吐きつわりがダブルで現れてしまうのです。 また、臍下(下腹部)の所見から、母体の弱り・消耗が判断できます。 つわり治療よりも先に母体の元気を補充しなければいけません。 でないと、つわり治療の効果が表れにくいどころか、 母体の体力が持たない状況になってしまう可能性があるのです。 ◆治療方針 1、安胎 2、脾胃の弱りをたてなおす 写真:妊婦さんのお腹に温灸治療 母体の消耗が激しいため、いきなり強いつわり治療はできません。また妊娠10週という初期の段階でもありますので、まずは赤ちゃん(胎児)の安全を最優先とするため、安胎効果のあるツボ(経穴)に施術します。 次に消化器系の力を増すために、弱ってしまった脾胃(消化器系)を建てなおす治療を行います。上写真のような温灸を腹部に行います。 吐き気・嘔吐が起こるということは脾胃(胃腸・消化管)が常に逆流を起こしている状態です。その逆流を鎮めて、胃腸の力を正常に戻す治療を行います。 (脈診腹診問診などに15分、治療時間に40分を要した。) 2診目 11月27日 初診と同様の治療を行う。 2診目からは、診察に10分、治療に50分とし、 置鍼(ウトウトしながら鍼を受ける)を織り交ぜて、 とにかく安静に休んでいただき、少しでも体力の回復を進める治療をとしました。…