突然のめまいと吐き気に歩けない…

買い物途中でメニエール症状を発症

今回のメニエール症状の鍼療カルテは60代後半の女性。

買い物途中でスーパーの店内で突然にメニエール症状が起こったとのこと。

症状も強く、猛烈なめまいと強い吐き気のため自力では歩けない状態、家族に手を引いてもらいながらの来院となりました。


治療ベッドに横たわるものの、目を閉じてもめまいがする。
かといって目を開けようものなら強力なめまいが襲ってきて、吐き気が増強すると、訴える声も弱々しい…そんな状態。

聴けば、メニエール症状は15〜20年に何度か発症していたとのこと。

「最近の体調はそれほどおかしくなかったのに…」とは本人のお言葉。
しかし、ここ最近の変化に急激な湿度上昇があったことは見逃せない外的要因の一つです。

気圧や湿度の変化をきっかけに「めまい・吐き気・耳鳴りが急に発症した」ということは意外と多いケースなのです。

体に影響を与える外からの要因として湿度は湿邪(しつじゃ)や水毒(すいどく)とも呼ばれます。
この水毒の有無を確認するために、脈診・腹診を行います。

脈診では全体に弱く沈んでいるものの、肝腎の根っこは力が残っているようです。脈状は軟脈大脈といったところでしょうか。
軟脈が出ていると時点で湿気の影響を受けている可能性が強いといえます。

腹診では上実下虚(じょうじつかきょ)の情報が強くあらわれています。
鳩尾(みぞおち)の緊張が強く、漢方ではこのようなお腹の状態を心下痞(しんかひ)と呼びます。

この心下痞、軟脈、悪心、吐き気などは水毒と関係の深い情報だといえます。

鍼灸師のための☝point情報

湿邪や風邪 寒邪などを外邪と呼び、体調に影響を及ぼすとされていますが、霊枢にあるように正気がある程度 充実していたら、それほど大きく傷害されることはありません。つまりこの方はそれまでに大きく正気を消耗するような下地があっったということが推測されます。

この方の場合も、正気の弱りが脈診・腹診所見に現れています。
となると、まずは正気の弱りを補充して、悪いものを取り去るという治療方針が立てられます。

その次に処理すべきは湿邪です。この症状は単なる虚証によるものではなく、正氣の虚と実邪が混在して起こる症状です。邪の性質と居場所を明確にすることで治療効果が左右されます。

鍼でめまい体質を改善すると安堵の声が

とにかく目が回るような強烈なめまいを鎮静化させる必要があります。

めまいを起こしている身体は、まさに「上実下虚(じょうじつかきょ)」という状態にあります。体の上部に「めまい・吐き気」などの症状が集中しやすく、下部は根本的な元気が不足しているのです。メニエール症状は上下のバランスが破綻してしまった状態といえるのです。

めまいの治療では、この上実下虚の状態を元に戻してあげる必要があります。鍼灸では上実下虚の状態を改善することは、日常的に行っていることです。

治療の前半はあお向けになってもらい、お腹と足のツボを使い、体の上下のバランスを元に戻します。

すると「あ~・・・目が回らなくなってきた。」とホッとしたような声で症状が変化していることを教えてくれます。

ここで注意しなければいけないことは“めまいが治まったからと言ってすぐに目を開けないこと”です。それを注意しようとした瞬間・・・

油断大敵!めまい再び…

「あー!やっぱりまだ目ぇ回るわ・・・!!」
「んー・・・気持ち悪い・・・」

と、実況中継をしてくれました。

まだこの段階では、完全にめまいを鎮めきっていません。
言うなれば、体を治すためにいったん症状を落ち着かせている状態なので、かんたんな刺激ですぐに症状が再発してしまう状態なのです。

めまいの再発を実際に体験しているので、この理由を伝えるとすぐに理解してくれました。

「(目を開けて)良いと言うまでしばらく目を閉じてもらうこと」を約束してもらい、治療再開です。

さて治療方針でいうと、上実下虚の状態を解除しただけではめまいも吐き気も改善しないということが分かりました。
このことから、メニエール症状を治すにはもう一手が必要だということが確認できました。

そのもう一手が水毒除去です。そしてその水毒は主に鳩尾(みぞおち)に居すわっています。上実下虚モードを解除し、みぞおちの水毒を取り除く鍼をしましたところ・・・。

「また めまいが止まった・・・」
「さっきと違って気分もスッとした感じがします。」と、声にも力が戻ってきたことが分かります。

みぞおちの水毒を取っているので、ムカムカ吐き気も無くなっているはずですので、それも確認すると

「ホントに!ムカムカしたのが無くなってます。」とのこと。

ここでようやく目を開けてもらっても大丈夫。少々なら体を動かしても大丈夫なはずです。

鍼治療の後半は安定させること

姿勢を変えても大丈夫なので、ゆっくりうつ伏せになってもらいます。

その際も「あー・・・体を動かしても目が回らない!!」
「鍼ってエライもんやねー」と感想をしみじみと伝えてくれます。

後半の治療目的は、背中のツボを使って「改善した状態を安定させること」です。

鍼した直後は文字通り「病み上がり」の状態なので、非常に不安定なのです。
ですから症状を再発させないために、体質そのものを安定させる必要があります。

背中のツボもひどい状態でしたが、鍼でツボをキレイにしていきます。

体幹部にある背中のツボは体の奥深くにつながっていますので、体質を安定させる目的に向いているのです。
(この点はお腹のツボも同じ効能があります)

このように鍼治療の前半と後半を終え、立ち上がってもらうと、正直言ってまだ心もとない感じ、不安定感は残りますが、
グルグル目が回るようなめまい、吐き気は消失しています。

あとは、帰宅して速やかに安静にすること、今日はずっと寝ていること。
食事は摂りすぎないこと、むしろ1食2食なら抜いても良いことを伝えて、次回の治療で勝負をつけます。

2診目で勝負をつける!

次の日も治療に来てもらいます。

この手の症状は長ーく通院してもらうものではなく、短期決戦で勝負をかけます。

昨日はよく眠れたようす。
というか『こんなに眠れるのか…?』というくらいずっと寝ていたとのこと。
「鍼してもらったから寝ることができました。」
「あれで鍼してもらってなかったら寝るに寝れず苦しんでたと思う」
とのお言葉。

「食事も夜におかゆを少したべたくらいです」
「先生の言う通りで、お腹が空きません。」
「主人は心配してるのか『もっと食べろ!食べないと元気が出ん!』ってうるさいんですけどね…(苦笑)」

と、睡眠・食事ともに治癒に向けて足並みそろっているようす。

体の方向性も鍼治療の方向性も一致しているようですので、変わった手は打たずに前回と同じ治療方針です。

2診目の治療はほぼ同じ内容ですので省略・・・。

ただ、1診目との違いは治療後のお体のようすです。

立ったり歩いたりすることも、危なげなくできるようになりました。
当然めまいを起こすこともありません。

まだ首を振ったり、うつむいたりすることは当分の間は避けてもらうように約束してもらい、めまい救急の鍼治療はひと段落です。

3診目は1週間後に来てもらい最終調整をして急性のめまい治療にピリオドです。

  

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