宇陀市歴史文化館 薬の館に見学

院長の足立です。奈良県レポートの第2段です。

曽爾高原を後にした我々は「薬の町」ともいわれる宇陀町に向かいました。目的地は2か所。「薬の館」と「森野旧薬園」です。もはや夫婦のお出かけドライブではなく、足立鍼灸治療院の研修旅行です。

宇陀市歴史文化館 薬の館

まず最初に発見できたのは「大宇陀町 歴史文化館 薬の館」の看板(下写真)でした。

写真:この立派な看板は当時の細川家の繁栄ぶりを示しています

この立派な看板は、当時の薬問屋・細川家の繁栄ぶりを象徴するものです。造りは「銅板葺唐破風附看板(どうばんぶきからはふつきかんばん)」と呼ばれ、銅板葺きの屋根、唐破風のデザイン、そして屋祢下の細工をみれば、寺社と同等の技術を用いて作り上げた看板であることが分かります。

また看板には人參五臓圓と天壽丸の薬品名がドーン!また天壽丸の上にある白丸マークは元々“菊の御紋”であったと言われています。

明治に入り維新を迎え、菊の御紋を看板に掲げるのは適切でないとして、白く塗りつぶされた…とのことです。

さっそく入館料310円(JAF会員証を提示すると200円)を支払い入館。まず最初に10〜15分ほど館員の方の説明を聴き、館内を見学させていただきました。

この「薬の館」はなんと!「自由に撮影して良し」とのこと。

人参五臓圓には菊の御紋が!

ここは薬に関する資料が多く、とくに看板が多かったですね。まず入口ホールから座敷に上がると目の前に「御免 人参五臓圓」の看板が!
この看板には“菊の御紋”が残されています。“菊の御紋”を使用する許可をいただいたとする「御免」の二文字が刻まれています。


写真:人參五臓圓の看板

その隣には定番の薬棚もあります。やっぱり薬種問屋といえばこの薬棚ですね~。

 
写真:薬品棚

首より上の薬…とは!?

そして店先の棚にも刻まれる文字がコレ↓「腦病必治劑 首より上の藥」


写真:番頭さんが使っていたのかのような棚

「脳の病を必ず治する薬剤 首より上の薬」とのフレーズや薬名から、頭や脳の病を治すかと思われますが、そうではありません。このお薬が効くのは……詳しくは館員のおじさんの説明をお聞きください。

ちなみに近くの薬店「平五藥局」さんにてこの「首より上の薬」購入しました。

写真:首より上の薬(黄色い箱)

5種の生薬〔センナ・ダイオウ・ケンゴシ・シャクヤク・センキュウ(生薬名:番瀉葉・大黄・牽牛子・芍薬・川芎)〕を配合。この生薬構成をみれば『あぁー、○○な効果ね』と、分かる人には分かると思います。もし、興味がある方は当院でも説明させていただきますよ。

他にもお薬の看板がこんなにズラリ!

中将湯に六神丸の看板

婦人科のお薬で有名な「中将湯」の看板もありました。中将湯は今でもツムラさんから販売されています。


写真:中将湯と六神丸の看板

横に並ぶ「六神丸」は心臓の薬として用いられ、動悸・息切れ・気付けなどに使われます。この六神丸を改良したお薬が救心(きゅうしん)です。救心は「きゅ~~しん♪きゅ~しん♪♪」のCMソングで広く知られているお薬ですね。
右端に亀田利三郎と書かれていることから「赤井筒薬 亀田六神丸」の看板でしょう。

クロサイの角(犀角)


写真:ガラスケースの中にあるのはなんとクロサイの角

クロサイの角は「犀角(さいかく)」と呼ばれる動物生薬です。もちろん現在はサイの角はワシントン条約により取引・流通を禁じられており入手できません。それでも密漁が後を絶たないのが現状なのですが…。
このケースの犀角は往時に宇陀の細川家に渡ってきたものなのでしょう。貴重な生薬です。

巨大な鍾馗(しょうき)像!


写真:天井に頭が届くほどの大鍾馗像

入ってすぐの座敷にも鍾馗(鐘馗・しょうき)さんがおられましたが、蔵に保存されている鍾馗像はこんなビッグサイズ!等身大を超えています。そして「藤澤樟脳」の商品名が胸にドーン!
藤沢製薬の看板商品のひとつが「樟脳 」。タンスの防虫剤で知られています。
ちなみに藤沢製薬と山之内製薬が合併して現在のアステラス製薬になっています。

六神丸のマメ知識

一般向けというよりも私のための備忘録としてMEMOしておきます。

マメ知識

この亀田利三郎という方は、当時中国からの輸入に頼っていた六神丸を国産化した人物。当時の中国産六神丸には「麝香・牛黄・蟾酥・辰砂・鶏冠石」が用いられていました。辰砂は硫化水銀、鷄冠石は砒素の硫化鉱物。どちらも鉱物生薬ではありますが、明治の薬制改革により鷄冠石を使用することができなくなり、亀田利三郎さんは日本版の六神丸を考案したとのこと。
当時の詳しいレシピは残されていませんが「麝香・牛黄・熊胆・蟾酥・辰砂・竜脳・真珠・結合剤」、そして後に辰砂も使用不可となり、現在の六神丸の構成は「麝香・牛黄・熊胆・蟾酥・人参・竜脳・真珠・結合剤」に落ち着いたとのことです。
また名称の六神は四方を司る神(青龍・白虎・朱雀・玄武)に加えて騰蛇と勾陳(中央にして天地)の六つの神の名を冠した薬名とのことです。
(参考サイト『日本家庭薬協会』さんより

ちなみに会社によって六神丸の生薬構成は異なります。「虔脩ホリ六神丸」に使用される生薬は〔蟾酥・牛黄・鹿茸末・人参・真珠・竜脳・同動物胆(豚胆)・添加物〕とのこと。
そしてあの「救心」に用いられる生薬は〔蟾酥・牛黄・鹿茸末・人参・羚羊角末・真珠・沈香・竜脳・動物胆(豚胆)・添加物〕です。
『救心製薬株式会社』さんサイトより)

中将湯のマメ知識

今もツムラさんで販売されている中将湯
マメ知識

中将湯の処方構成〔芍薬・当帰・桂皮・川芎・蒼朮・茯苓・牡丹皮・橙皮・香附子・地黄・甘草・桃仁・黄連・生姜・丁子・人参〕
適応症:血の道症・産前産後の不調・更年期障害・月経不順・月経痛…など

名前の由来
能や浄瑠璃にある「中将姫伝説」に登場する中将姫のこと。中将姫は天平19年(747年)に藤原豊成(藤原鎌足の曾孫)に生まれた女性。…(中略)…お世話になった藤村家に婦人科の妙薬(処方)を伝えたものが中将湯だという。
明治の頃に津村氏(津村順天堂の創業者、現ツムラ)が東京日本橋にて販売を始めたことでも有名。

鍾馗について

鍾馗

中国の神さま、疫病を払い、魔除けを行う。鬼瓦などにも鐘馗が用いられるのはそのため。

以上、薬の館レポートでした!

『森野旧薬園を見学』に続きます。

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