この春に多い?眩暈(めまい)
先日、眩暈の鍼灸カルテを紹介しました。この春は例年よりも体調を崩される方が多く感じます。その中でも眩暈は多くみられる症状のように感じています。
そんな中、今度はわたしの母親(同居中)が突然に眩暈(めまい)を発症しました。もちろん、すぐさま鍼灸で対応したわけですが、そのときの鍼灸カルテを紹介します。
実は私の母は眩暈(めまい)を起こしやすい体質を持っているため、私が大阪に帰ってきた時分は何度も眩暈(めまい)を起こしていました。いわゆるメニエール病の診断を受けていたようです。
最も記憶に残る眩暈(めまい)では、兄の結婚式当日の朝に眩暈を起こしたこともありました。すぐさま応急処置的に鍼して、その日は無事に事なきを終えましたが…(おそらく、母本人はそのことを忘れているハズ)
それからも繰り返し眩暈を起こし、そのたびに鍼とお灸で対処してきました。そのせいか、この10数年は母が眩暈(めまい)を起こすこともなくなり、私にとっても眩暈(めまい)は得意な疾患の一つとなっています。
さて眩暈の鍼灸カルテといきましょう。
鍼灸カルテ・眩暈 2024.04
主訴:めまい
発症時刻は4月3日 AM6:00くらい
朝起きるなり、突然の眩暈(めまい)に襲われた。
また、眩暈とともに吐き気を伴う。寝返りしても眩暈が起こるので、ただただ目を閉じて、布団の中でジッとする。(目を閉じても眩暈・吐き気はしばらく続く)
眩暈がおさまるまで目を閉じて床に臥せる…のイラスト
父からの報告を受け、家庭内往診。すぐに寝床にて治療を始めます。まずは脈を診ます
◇脈診情報
沈んだ脈で極めて弱い脈
また、その弱い脈の中にも小さな滑脈がみられる。
そして意外なことに、脈位(寸関尺)の差異はみられない。
症状の特徴、脈診情報、そして普段の母の体質から…次のような治療方針をたてます。
◇治療方針
①…中氣を補い、膈を開く(補中・利膈)
②補脾胃によって①を補助。かつ利水祛湿
③宿(腎虚)に対する補裏気および納氣
治療はお灸からはじめ、次に鍼治療です。
使用した経穴は、中脘・関元・鳩尾・足三里・陰陵泉・太谿……など(他は門外秘)です。
この治療によって寝返りが可能となります。
眩暈(めまい)に対する鍼灸は、このように効果がすぐに現れるケースがしばしばあります(もちろん個人差・体質差はあります)。眩暈のように「突然に発症し、何をしてもツラい…!!状態を速やかに解除できる」というのは鍼灸ならではの長所だと思います。
寝返りができるようになったので、次は伏臥位(うつ伏せ)にて背部治療を加えて、さらに症状の軽減を狙います。
一連の治療によって、起床可能・起き上がることもできるようになりました。
とはいっても、しばらくは要安静であること。そして排尿頻度が増えることを伝えておきます(利水の治療をしたので、尿の回数が増えるのです)。
2診目は二日後の4月5日
(※4/4は大学病院勤務の日で、半日は留守にしていたのです…と言い訳)
主訴:眩暈(めまい)はほぼ消失。フワフワ感じが少し残るくらい。
経過は良好のようで、軽い食事も摂れている。
起き上がり、二階まで歩いて上るなど、屋内や近所までの近距離歩行なら問題ないとのこと。
また初診の鍼治療の後は、やはり尿がよく出たとのこと。
◇脈診情報
全体的に沈んだ脈は変わらずだが、緩脈が入ってきて、滑脈もみられる。
両関上脈は弱脈が残る(左<右)
寸口脈にも弱脈が残る。
関上と尺中の一部に緩脈がみられる
この脈診の情報が、初診時と2診目で大きく変化している点がポイントなのです。
脈診所見は初診時と大きく変化しているとはいえ、これは良い変化であり、想定内のこと。ですので、治療方針は前回と同じでいきます。
一連の治療によって、フワフワ感も消失。
眼の力も増し、目に輝きが出る。
(いわゆる目ヂカラです。この目の力の有る無しって意外と大事な所見です)
治療後の脈診所見は、母の通常脈に戻る。
以上をもって、眩暈の急性期を脱したとみなし、通常の養生期に入ります。普段から親孝行の鍼お灸をしなさい!ということでしょうね。
院長 足立繁久